2018年12月27日木曜日

Sino (3)

前の前の記事を書いているときに気になったこと。

カタルーニャ語、ガリシア語、アストゥリアス語は、スペイン語と同じように「しかし」にはラテン語の PER HOC から来た語 (PER HOC 系と呼ぶことにする) を使い、no ... sino のパタンでは「もし」と否定の組み合わせ (これもラテン語の相当する語を並べて SĪ NŌN 系と呼ぶことにしよう) が使われる。

それに対して、ポルトガル語、イタリア語、フランス語では、どちらの場合もラテン語の MAGIS から来た語 (以下 MAGIS 系) を使う。

pero(no ...) sino
cat.peròsinó
gal.perosenón
ast.perosinón
port.mas
it.ma
fr.mais


実際には、使い分けのあるグループには MAGIS 系の「しかし」もある (es: mas, cat: mes, gal: mais, ast: mas)。しかし普通なのは PER HOC 系の方だ。一方、イタリア語には「ma よりやや強い反意 (『伊和中辞典 (第2版)』小学館 1999、iOS版 ver. 3.5.2 物書堂, s. v. però)」を持つ però がある。ポルトガル語にも pero があるが «arcaico (Dicionário de língua portuguesa, Porto Editora, iOS ver. 3.4.06, s. v. pero)» だ。なお、古仏語には PER HOC から来た peruec という語があったようだが、「しかし」の意味ではなさそうだ。

というわけで、単純化は慎まねばならないが、PER HOC 系と SĪ NŌN 系の役割分担がある言語と MAGIS 系でまかなっている言語がある。これはたまたまなのか、それとも言語学的な理由があるのか。すでに解決済みの問題かもしれないが、勉強するかもしれない時のために、とりあえずメモしておく。