2017年8月12日土曜日

Nadie eres tú

Nadie をいわゆる非人称の2人称単数で承けている例:

Nadie puede culminar con éxito un trabajo de investigación sin ayuda, sin la generosidad de los que se implican contigo o, por lo menos, sienten respeto por el esfuerzo ajeno y gastan un poco de su tiempo en echarte esa mano tan necesaria, que es otro eslabón más de la cadena de coyunturas que propician la llegada al destino deseado (Jiménez Valverde 2016: 5).

より硬い文体だったらこういう2人称単数は使わないだろうから、contigo や echarte のかわりに何が来るのだろうか。

非人称の2人称単数は証拠性のマーカーだという説をどこかで読んだことがある。つまり、伝聞とかではなくて話者の経験にもとづいた一般化を語っているということになるが、この例は著者の謝辞の冒頭の文なので、それが当てはまりそうだ。

  • Jiménez Valverde, Miguel Ángel (2016), Aproximación biográfica de El Niño del Genil, La Droguería Music.

2017年2月6日月曜日

『フジタの白鳥』

佐野勝也著。



ー昨年11月に亡くなった友人の著書で、ようやく出版にこぎつけたものが先週末に届いた。中身と著者についての簡単な説明を出版元のページで読むことができる:

http://edimantokyo.com/books/9784880084657/

興味が出たら、あるいは出なくても、ぜひ買って読んでほしい。友人の書いた本なので、客観的な紹介はできないし、美術史は専門外だから学術的な批評もできないが、藤田嗣治が携わった舞台美術という、これまでおそらくほとんど研究されてこなかったテーマに真正面から取り組んだ労作だ。友人の感想としては、おお、よくここまで調べたな、すごいじゃないかと思い、専門外の研究者としては、思考を刺激する面白い本だと思う。

もちろん完璧な本は存在しない。読んだら大いに批判すればよい。真摯な批判にさらされるのが、この手の本にとってはー番の幸せなことなのだから。僕も読んで思いつくことはいろいろあるが、ちょっと残念なのは「忌憚のないところを」と言われて言われた通りボコボコにする楽しみが永遠に失われてしまったことだ。