2018年11月6日火曜日

Hui

最近また失敗。Huir の単純過去 (点過去) 1人称単数形にアクセント記号を付けるな、と言うのを忘れたのだ。で、小テストでその問題を全員正解にせざるを得なかった。

問題の形は、現行のスペイン語正書法では hui と書く。ところが、日本で手に入る辞書では大抵 huí になっている。これは2010年以前に認められていた書き方だが、今では通用しない。辞書がそれに追いついていないので、注意喚起しなければいけないわけだが、それをよく忘れるわけだ。

スペイン語教育に携わっている人なら、2010年に起きた guion 騒動を覚えていることだろう。これは、それまで認められていた guión がダメになり guion と書かなければいけなくなったのに対して、それじゃいやだという人たちがワーワー言った事件だが、hui も guion もアクセント記号を書けなくなった理由は同じなのだ。

実際には、1999年の正書法で guion や hui は類似の例とともに正書法上1音節と見なされるようになり、1音節だからアクセント記号は不要になった。しかし、実際には2音節で発音する人もいるので、そういう人は2音節語として書いても良いということで落ち着いたのだった。もし gui-on という2音節なら -n で終わって最後の音節に強勢があることになり、アクセント記号が必要になる。もともと1999年の正書法の趣旨は io その他二重母音とみなしうる文字の連続はすべて正書法上二重母音とみなすということで、guión や huí という綴りは例外として認められたにすぎない。と言うか、これを2音節で発音するという伝統に対する譲歩だったのだ。この時点で、日本で出版されている辞書も原則の方に従って guion や hui を採ることもできたはずだが、そうならなかった。人一倍二重母音に関心のある僕自身も、ちゃんと認識していなかったので、気づいた人は恐らくほとんどいなかっただろうと思う。

2010年の正書法では、それまでの例外規定がなくなり、ia, ie, io, iu, ua, ue, uo, ui は実際の発音がどうであるかに拘らず正書法上は全て二重母音ということになった。これが guion のおかげでスペイン語業界では広く知られるようになったが、guion が目立ちすぎて、同じ原理で扱われる hui などが脚光を浴びることなく今に至っている。恥ずかしながら、僕らの教科書も直したのはわりと最近のことで、しかも原稿のフォント指定の関係で検索もれがあり、去年まで古い綴りが残っているところがあるという体たらくだった。

というわけで、罪滅ぼしになればと思い、今はアクセント記号を書かないけれどもあなたの辞書には記号付きで載っているんじゃないかという単語・語形をいくつか挙げておこう (他にもあるかも知れないが、とりあえずこれだけ)。

まず、単語は:
  • guion, truhan

それから活用形が問題になるのは:
  • huir
  • fiar, liar, piar; criar (/^[^aeiou]+iar$/)
  • reír; freír (/^[^aeiou]+eír$/)
かっこの中は正規表現 (意味の分からない人は無視して構わない)。

具体的な活用形については、vos の形を考慮に入れずに見ることにするが、まず huir は直説法現在と単純 (点) 過去が影響を受ける:

huir
直・現直・点
huyohuimoshuihuimos
huyeshuishuistehuisteis
huyehuyenhuyóhuyeron

正書法の単音節 -iar 動詞は直説法現在、単純 (点) 過去、接続法現在:

fiar
直・現直・点接・現
fíofiamosfiefiamosfíefiemos
fíasfiaisfiastefiasteisfíesfieis
fíafíanfiofiaronfíefíen

同じく -eír 動詞は直説法単純 (点) 過去と接続法現在:

reír
直・点接・現
reíreímosríariamos
reístereísteisríasriais
riorieronríarían

それぞれ太字の語形がアクセント記号を書かないやつだ。大丈夫だと思うが、同様の活用をする construir, confiar, sonreír などは、音節が複数あるので、対応するところでアクセント記号を忘れないように。なお、Real Academia のサイトで公開されている辞書を使えば、それぞれの動詞の項で活用形を確認することができる。