2014年7月1日火曜日

Scarlatti

«Sonatas: Scarlatti por Cañizares». Juan Manuel Cañizares の新しいCD。格好良い。

スカルラッティはよく知っているわけではない。誰の曲か知らずに聞いて「あーこれすかるらってぃっぽい」と思ったりこともある程度にはイメージを持っていて、決して嫌いではないが、ちょっとうるさいという印象があって、特に好んで聞く作曲家ではない。その派手な技巧で飛び回るところをどうやって料理するのだろうと思って聞き始めたのだが、予想外に落ち着いた演奏で全然うるさくない。これなら何度聞いても良い。まあ、もともとそんなに良く知った作曲家ではないので「再発見」などと言うのは大げさすぎる。再会ぐらいだろうか。で、チェンバロによる演奏を引っ張りだして久しぶりに聞いてみたのだが、やっぱりちょっとうるさかった。チェンバロとギターの違いなのか、演奏者の個性なのか、選曲なのか、何か他の理由があるのかよく分からないが、とりあえず今のところ僕がスカルラッティを楽しく聞けるのはカニサレスのおかげである。それはお前がスカルラッティを分かっていないからだ、と言う人がいたら、それは受け入れるしかないが。

ドメニコ・スカルラッティ (Domenico Scarlatti, 1685-1757) はイタリア生まれだが、ポルトガルとスペインで活躍した。「彼が残した (一楽章制の短いものながら) 五百数十曲にも及ぶソナタは、すべて彼のイベリア定住後に書かれた (少なくともその後に出版を見た) のである (濱田滋郎, 2013,『スペイン音楽のたのしみ』音楽之友社, p. 123)」ということで、スペインと縁のある作曲家だ。カニサレスが彼を取り上げた理由もこの辺にあるのだろう。バロック期の音楽とフラメンコとの連続性を意識して演奏するのは最近ポッと出てきたアイデアではなく、クラシック (古楽) のほうでは結構前から行われていると思う。しかし、人気のあるフラメンコアーティストが参入してきたのは、最近の現象なのかもしれない。カニサレスの他には、例えばビオラ・ダ・ガンバの Fahmi Alqhai とカンタオールの Arcángel が組んでやったの («Las idas y las vueltas: Músicas mestizas», 2012) がある。この辺りに注目したフラメンコ研究が進展してきていることも、こういった動きを後押ししているに違いない。今読んでいる途中の Campo, Alberto del; Cáceres, Rafael, 2013, Historia cultural del flamenco: El barbero y la guitarra, Almuzara も、そんな本のひとつ。