2014年7月2日水曜日

iPat

日本語では「促音+濁音」の組み合わせがもともと無く、これを持つ外来語は「促音+清音」として発音されることがある (「促音+濁音」を持つ方言もあるようだが)。良く知られたものとして「ベッド/ベット (bed)」がある (ただし、「ベット」はドイツ語の Bett から来ているという説もあって、『大辞林』はそれを採っている)。

この「清音化」が起こるのは、単に「促音+濁音」ということではなく「濁音+促音+濁音」だと説明しているページがあるのに気づいた。確かに、パッと思いつく例はそうなっている。「ベッド/ベット」しかり、「バッグ/バック (bag)」しかり、「ドッグ/ドック (dog)」しかり、「グッド/グット (good)」しかり・・・

だが、この記述は間違っている。「非濁音*+促音+濁音」だって清音化は起きるのだ。僕自身は「パッド (pad)」を「パット」として覚えたが、検索してみると、たとえば「肩パット」なんかは珍しくない。じゃあ「アイパット (iPad)」はどうかというと、やはり見つかるのだ。他には「ビリー・ザ・キット (Kid)」も出てくるし、「プレゼンテット・バイ (presented by)」も「タック (tag) を組む」も見つかる。「スクランブル・エック (egg)」も「濁音+促音」とは言えない。こういう例の中には入力ミスも含まれるだろう。しかし、全部がそうだとは考えにくい。

実は、このテーマについてあるスペイン人と話をして、やはり「濁音+促音+濁音」の話になったので、気になってgoogleaってみたというわけなのだが、予想以上に「清音化」の生命力は強いというのが感想だ。iPad のような新しい単語でも起こる、つまり今でも生きたプロセスなのだ。音韻体系は外からの影響でそう簡単に変わったりしないということか。

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補足 (2014/07/02)

* 「パッド/パット」のような「半濁音+促音」の例があるので「清音」を「非濁音」に直しました。「濁音/清音」と書きつつ、頭の中では「有声音/無声音」になっていました。反省。