2014年7月24日木曜日

iPat (2)

「促音+濁音」のつづき。もう少し検索してみた。

アイパットがあるからにはアイポット (iPod) もある。ラピットプロトタイピング (rapid) なんてのもある。ヘットホン、ヘットライト、ヘットライン (head...) も見つかる。ヘットマッサージもそうだろう。ついでに子どもの頃ロビンフットと言っていたことを思い出した。「義賊ロビンフット」で検索すると、やはり出てくる。オートバイの種類としてのネイキット (naked) も見える。スカットミサイル (scud) もある。それから pick のピックと紛れる危険のある pig もピックになりうる。単独の例も見つかったし、固有名詞として「ピックファーム」を名乗る養豚業者もいる。ヘッチファンドだって (hedge) 負けてはいない。

「ッブ」の例はなかなか難しい。これが清音化するならば「ッフ」になるはずだが、今のところ見つかっていない。無声化ならば「ップ」で、人名でリー・J・コッブ (Cobb) を「コップ」と表記したページがあった。

とりあえずこのくらい集めれば十分だろう。もちろん、ネット上の書かれた例を見ているわけだから、すべての例が無声の発音を反映していると考えるわけにはいかない。しかし、日本語母語話者として自分で普通に発音していたものもあるし、今見て違和感のないものもある。「促音+濁音」は現在でも不安定なのだ。

なお、これは規範の話ではない。規範があるとすれば、それは濁音を保つということだろう。清音化・無声化がそれに反する動きだとすれば、非促音形 (パブ、ハブ、ハグ、タグ、タブ、アド・・・) は濁音のまま日本語の音連続として落ち着くので、解決になりうる。

それにしても、「濁音+促音+濁音」のときだけ「促音+清音」になるという間違った記述の出所はどこなのか、そっちの方が興味深かったりする。「促音+濁音」から離れれば、目立つのはむしろ濁音への同化的変化だからだ。アボガド (avocado) と発音する人は多いし、ジギル (Jekyll) とハイドも普通だろう。僕は長いことハンフリー・ボガード (Bogart) と言っていたし、最初のうちはカート・ヴォネガッド (Vonnegut) だと思っていたような気がする。最後の例は、わざわざ「促音+濁音」のパタンを作っているわけだが、そう言えば人間ドッグ (dock) もある。

ふと思いついて検索したら Brad Pitt は正しいブラッド・ピットの他にブラッド・ピッド、ブラッド・ビット、ブラッド・ビッド、ブラット・ピット、ブラット・ピッド、ブラット・ビット、ブラット・ビッド、さらにはプラッド・ピット、プラッド・ピッド、プラッド・ビット、プラッド・ビッド、プラット・ピット、プラット・ピッド、プラット・ビッドが見つかる (プラット・ビットは、ざっと見たところ確実な例がない)。こうなると、同化というよりは有声無声の対立が機能していないと言ったほうが良いような気がしてくる。もちろん、対立はあるわけだが、濁音の体系上の位置を示していて興味深い。