2014年10月19日日曜日

És catalana

前回の続きだが、もう少し言語的な話。"estadounidense de origen japonés" で検索してみると、中村修二や南部陽一郎をそう形容しているテクストが見つかる。なぜか江崎玲於奈や下村脩がそうなっているものも引っかかるが、この2人は日本国籍のようだ (アメリカで研究している・いたのでそう思われたのだろう)。これは「日本出身の米国人」と訳してよいだろうか。ちょうど estadounidense de origen español で Severo Ochoa が出てきたりするのと同じだ。他には mexicano de origen español で検索するとスペイン内戦がきっかけでメキシコに亡命した人の名前 (Rodolfo Halffter とか) がヒットする。この場合 "X de origen Y" のほか "Y nacionalizado X" という言い方もある。

だが、de origen Y を「Y出身」と訳してはいけない例も見つかる。さっきの estadounidense de origen japonés で引っかかる名前の中には Francis Fukuyama (シカゴ生まれ) や Isamu Noguchi (ロサンゼルス生まれ) もあるし mexicano de origen español の中には作家の Jordi Soler (メキシコ・ベラクルス州生まれ) もある。つまり「Y系」とでも訳したほうがいいような場合だ。Francis Fukuyama に関しては japonés nacionalizado americano としているテクストも見つかるが、たぶん誤解に基づく記述なのだろう。

というわけで X de origen Y だけでは出身地がどこか分からない。それだけではない。Najat El Hachmi はカタルーニャ語版のウィキペディアでは «és una escriptora catalana i mitjancera cultural d'origen amazic» となっているのだが、amazic は日本ではベルベルと言っている人たちのことで、ベルベル人は複数の国にまたがって住んでいるから、国名という意味での出身地の手がかりにはならない。彼女の場合はモロッコ生まれだが d’origen amazic を「モロッコ出身」と訳すわけにはいかない。やはりここは「ベルベル系」になるのだろうか。ちなみに Jo també sóc catalana を半分ぐらいまで読んだところでは、労働許可がないので仕事探しに苦労する話が出てくるので、16歳の頃はスペイン国籍ではなかったということは分かるが、今の国籍は (徹底的に調べたわけではないので) 分からない。

なお、Najat El Hachmi に関するスペイン語版のウィキペディアの記述は «es una escritora de origen marroquí establecida en España» で、国レベルの形容になっているところが、独立国を持たないカタルーニャやベルベルというレベルで記述しているカタルーニャ語版と大きく異なる。