2014年4月20日日曜日

Flagelarse

中級学習者向け。

El País に載った漫画のキャプション (と言うのだろうか?): Penitente rico flagelándose en la espalda de penitente pobre (Viñeta de El Roto del 18 de abril de 2014).

Flagelar は「をむち打つ」という他動詞だから flagelarse は「自分をむち打つ」ということになる。En 以下がむち打つ部位を示すので flagelarse en la espalda で「自分の背中をむち打つ」ということになる。悔悟者 penitente だから当然だ。ところが、この例では espalda を de penitente pobre が修飾している。したがって la espalda は自分の背中ではなくて貧しい悔悟者の背中ということになる。論理的には変なスペイン語なわけだ。

そこから、富める者が悔悟して自分をむち打っていると言いながら実は貧しいものをむち打っているとか、富める者が取るべき責任を取らず、そのせいで貧しい者が苦しんでいるとか、あるいは、僕はよく分からないが、具体的な事例についての言及だとか、解釈がいろいろ出てくる。

というのも、表面的には理屈に合わない言い方から、言語使用者は合理的な解釈を導きだそうとする。そして表現者は、それを期待してものを言うことができる。日本語にすっきり訳すのは難しい (少なくとも僕にはできない) が、この表現の構造をとらえることができれば理解もでき、面白みも分かる。

そう、構造が把握できれば、だ。重要なのは、ここで se が果たしている機能の理解と、de penitente pobre が構造を壊しつつ重層的に意味を付け加えていることの認識だ。そして、これが把握できるようになるためには文法の勉強が大事だ、という常識的でひねりも何もないオチがつくというわけだ。