2014年11月15日土曜日

Amarillo

アカデミアの辞書における amarillo の定義をネタにした面白い記事があるので紹介しておこう (こちら)。かつてアカデミアの辞書は amarillo を「レモンの色」としていたのだが、「コロンビアやメキシコ、キューバなど、彼の知る国々ではレモンは黄色ではない。緑色だ」という。「彼」というのはガルシア・マルケスのこと。

日本のスペイン語学習者にとっては、limón が緑色な国があることがあるのは是非覚えておきたい情報だ。しかし、辞書の記述がスペイン中心なせいで、limón といえば黄色、黄色といえば limón ということになっていた。

それが、この10月に出た DRAE の新版(第23版)では amarillo の定義から limón が消えたという話なのだが、ちょっと調べ方が甘い。たしかに DRAE の第21版 (1992) では amarillo の定義は «De color semejante al del oro, el limón, la flor de retama, etc. Es el tercer color del espectro solar» で、今回の第23版では «Dicho de un color: Semejante al del oro o al de la yema de huevo, y que ocupa el tercer lugar en el espectro luminoso» になっている。しかし limón は第22版 (2001) で既に消えているのだ: «De color semejante al del oro, la flor de la retama, etc. Es el tercer color del espectro solar» (修正版は «De color semejante al del oro, que corresponde a la sensación producida por el estímulo de longitudes de onda de alrededor de 575 nm» だが、第23版には採用されなかったわけだ). 同様に limón の定義は第21版で «siempre de color amarillo» を含むのに対して第22版と第23版の対応する部分は «frecuentemente de color amarillo» となっている。つまり、limón と amarillo の関係見直しは10年以上前に行われていたわけだ。

これはアカデミアが進めている汎スペイン語圏主義に沿った動きで、ガルシア・マルケスの一言が効いた可能性はある (Diccionario Clave が出たのは1996年。現物を持っていないので図書館の情報)。歓迎すべき変更であることに間違いはない。だからこそ、それがいつ起こったことなのか、ちゃんと調べて欲しいところだ。しかも DRAE の22版なんかネット上にあって寝ながらでも見ることができるのだから、チェックしなかったのは痛い。次からは注意してね。

(2014/11/16追記)
先方では、こちらの報告を受けて早速注をつけてくれた。こういうことはお互いさまなので、僕が何か変なことを言ったら指摘してもらおうと思っている。

それにしても黄色が「金の色」ってのは、もちろん理解はするのだが、違和感がなくもない。金って金色でしょ?