日本で初めての女性首相が誕生した。そこで先ず気になるのは「初の女性首相」はスペイン語で何と言うかだ (先ず気になるのはそんなことじゃないという人が大半だということは知っているが、このブログはこういう所なのでご容赦いただきたい)。
学習者的に思い付くかもしれないタイトルのような言い方はしないだろう。Primera ministra は女性形だが、これは文法的な理由でこうなっているだけだから「女性」首相の訳としては不十分だ。どこかに mujer とかが欲しい。と思ったのだが、検索すると «la primera primera ministra» が出てくるので、例によって予想は外れたわけだ。
気を取り直して別の言い方を探してみると、El País は «la primera mujer al frente del Gobierno» と言っていて、primera の重複を避けている。これはスペイン語の文体感覚として良く分る。他のサイトでも «la primera mujer en liderar el gobierno de Japón» とか «la primera mujer líder de Japón» とか «la primera mujer en ser elegida primera ministra» とか «fue elegida primera ministra de Japón, la primera mujer que lo consigue en la historia del país» とかが見つかる。一方 «la primera mujer primera ministra» という表現も出てきて、和文西訳的にはこのへんが落とし所かなと思う。
ついでに ChatGPT 君に聞いてみたら «la primera mujer primera ministra» という答えが返ってきた。
さて、ちょっと昔話をすると、サッチャー (イギリス初の女性首相) の時は la primer ministro とか la primer ministra とか、結構揺れがあった。Fundéu が2016年に正しいのは la primera ministra だという記事を出しているので、10年前も揺れていたようだ。今はどうなっているのか、高市首相の誕生で例も集めやすくなるかもしれない。
女性形の問題は、文法性を持たない日本語を母語とする者にとって面倒でもあり興味深いテーマだが、上に挙げた El País の記事に «la 104ª primera ministra japonesa» という表現がある。これが「104番目の女性首相」ではなくて「(女性である) 104番目の首相」だということは明らかだが、文脈を離れれば前者の読みも可能性として存在する。実際、イギリスのメイ首相を «la segunda primera ministra británica tras Margaret Thatcher» と呼んだ例が見つかる。以前、女性である「第二子」に対して «el segundo hijo» と言っている例を紹介した (https://vocesenredadas.blogspot.com/2023/08/el-segundo-hijo.html) が、takaichi と 104 で雑に検索した限りでは男性形を使った例は見つからなかった。
まあ面倒だ。