2015年12月27日日曜日

Gran crónica del cante 18

僕の原稿が遅れに遅れ、各方面に迷惑をかけたのだが、なんとか年内に完成。ほっ。曲目はこちら


今回の特集はガロティン。僕の友人の知り合いに、僕が勤務する大学のスペイン舞踊部のファンがいて、毎年の大学祭を楽しみにしているらしい。その人が僕の友人に、あの帽子をかぶって踊る踊り良いですよね、と言うのだそうだ。そうやってフラメンコを知らない人にも認知されているガロティンだが、今のフラメンコにおける位置づけは周辺的だ。ところが、20世紀の初頭、これがずいぶん流行したらしい。素人のお嬢さんたちが競ってこの踊りを習っている様子を風刺した記事が1911年に書かれている (Gelardo Navarro 2014: 133-5) ほどだ。そして、その記事の中でガロティンが baile gitano と形容されているのも興味深い。我々のCDには Mochuelo が歌った «Garrotín gitano» が収録されているが、ガロティンとヒターノの組み合わせを意外に思う人も多いだろう。まあ、新聞やレコードのタイトルなんか、ちゃんとした知識なしに書いている可能性もあるのだが、フラメンコとジプシー概念の関係は一部の人々が思っているほど単純なものではないし、不変でもない。

特集の担当は僕ではないので、以上はCDの解説には載っていない番外的補足。僕はガロティンが大好きで、Rafael Romero と Niña de los Peines が泣けるガロティンの双璧だと思っている。それから Tomás Pavón がレパートリーとしていたという記述 (Bohórquez 2000: 321, 2007: 132) もあって、聞いてみたかったと思う。今回の録音はガロティンが大いにはやっていた頃のもので、それぞれ楽しいが、やっぱり別格の Pastora 以外では Niño de Medina がすごい。

自分が担当した部分での発見は Niño de Alcalá と Niña de la Alfalfa。原稿を書くために集中して聴かなかったとしたら、素通りしていただろう。特に la de la Alfalfa が素晴らしい。


  • Bohórquez Casado, Manuel, 2000, La Niña de los Peines en la Casa de los Pavón, Signatura.
  • —, 2007, Tomás Pavón: El príncipe de la Alameda, Pozo Nuevo.
  • Gelardo Navarro, José, 2014, ¡Viva la Ópera Flamenca!: Flamenco y Andalucía en la prensa murciana (1900-1939), (Colaboración: Mª Amparo Fernández Darós), Universidad de Murcia.
(2015/12/28 加筆)